外傷とは

外傷は、身体外部の機械的、物理的、化学的な力によって組織や臓器に深刻な損傷を与えるもので、骨、筋肉、腱、神経、血管などに損傷を与え、内臓の破裂も引き起こします。外傷性傷害の症状は様々ですが、高い割合の患者が全身性炎症反応症候群(SIRS: Systemic Inflammatory Response Syndrome)を含む炎症亢進を経験し、急性腎障害(AKI: Acute Kidney Injury)、急性肺障害、ARDS、多臓器不全、二次感染、敗血症、静脈血栓塞栓症(VTE: Venous Thromboembolism)、その他の二次傷害(脳浮腫など)などの合併症を引き起こします。外傷患者の約3分の2はSIRSを経験し、さらなる合併症や臓器傷害につながる可能性のある関連リスクを軽減するために、炎症系を調節する新しい治療法が必要とされています。米国だけでも、外傷は年間22万人の死亡と300万人以上の非致死的傷害を引き起こし、45歳未満の死因の第1位となっています。外傷による経済的損失は、致死的および非致死的な負傷に苦しむ人々の医療費や労働損失を含め、年間6,710億ドルにのぼると推定されています。

現在の治療法

外傷に起因する全身性炎症反応症候群(SIRS)は、外傷(交通事故、銃創など)、薬物、感染を始めとする外部からのストレスに対する過剰な自己防御反応であり、自律神経、内分泌、血液、免疫学的変化がまずおきます。
この変化は、初めは体を防御する目的であっても、調節不可能なサイトカインストームとなり、大規模な炎症カスケードを引き起こし、臓器障害を起こし、死に至ります。
現在この状況に至った患者さんに対する有効な治療薬は無く、それぞれの症状に対して対処療法を行うのみです。

ヘリオスが目指す新規細胞治療法

ARDSなどの治験で示された通り、MultiStem®の急性期の炎症を抑える力がサイトカインストームを抑え込み、患者さんの予後に効果があるものと期待されます。米国での外傷の治験(MATRICS-1試験)では、効果評価をしやすいよう主要評価項目を腎機能に設定して治験を進めています。

MATRICS-1試験(米国)

156 人の患者を対象とした外傷の第2相試験

米国国防総省とメモリアル・ハーマン基金で実施中

テキサス大学ヒューストン・ヘルスサイエンス・センター (UTH)、メモリアル・ハ ーマン・テキサス・メディカル・センターにおいて治験進行中

交通事故、労働災害、銃創などによる外傷を対象

治験概要: 外傷による多臓器不全/全身性炎症反応症候群へのMultiStem®を用いた治療
無作為二重盲検プラセボ対照第2相試験

主要評価項目:腎機能(投与後30日)

副次評価項目:死亡率など

対象患者:入院後数時間以内の初期蘇生を経た重傷外傷疾患